生成AIの導入がうまく進まない会社をご支援していると、共通して見えてくることがあります。止まっている理由が、ツールの性能や費用ではなく、人と組織の側にあるということです。
アカウントは配った。研修も一度やった。それなのに、使っているのは一部の人だけ。こうした状況の裏には、「誰が旗を振るのか決まっていない」「学び方が人によって合っていない」「使っても評価されない」といった、人事の領域の課題が隠れています。
この記事では、生成AIの導入を始めてから最初の90日間で、人事が担うべき役割を三つに分けてお伝えします。
情シス任せにすると、なぜ止まりやすいのか
生成AIの導入は、情報システムの担当者が中心になって進めることが多いと思います。アカウントの管理やセキュリティの設定は、もちろん情シスの大切な仕事です。
ただ、導入した後に「現場で使われるかどうか」は、システムの設定だけでは決まりません。社員一人ひとりが新しい道具を手に取り、自分の仕事のやり方を変えていく。これは、言ってみれば職場全体の行動を変える取り組みです。そして、人の行動や成長を支える仕組みを持っているのは、人事です。
情シスが「使える環境」を整え、人事が「使われる職場」を整える。この分担ができている会社ほど、導入は前に進みます。
役割1 体制:推進役を任命し、時間を守る(1〜30日目)
最初の1か月で人事が取り組みたいのは、推進の体制づくりです。
まず、推進役を正式に任命します。ポイントは、AIに詳しい人よりも、周りから相談されやすく、新しいことを面白がれる人を選ぶことです。詳しさは後からついてきますが、周りを巻き込む力は簡単には身につきません。
次に、推進役の時間を守ります。兼務で任せる場合でも、週に何時間をAIの取り組みに使ってよいかを上司と合意し、正式な業務として扱います。「空いた時間でやって」では、本業の繁忙期にまっさきに後回しにされてしまいます。
あわせて、最初に取り組むチームを決めます。全社一斉ではなく、前向きなメンバーがいるチームを一つ選ぶと、最初の成功例が生まれやすくなります。
役割2 育成:層ごとに学び方を変える(31〜60日目)
次の1か月は、学びの設計です。生成AIの研修は、全員に同じ内容を一度だけ届けても、なかなか定着しません。立場によって、必要なことが違うからです。
管理職には、AIで何ができるかを知ったうえで、部下の挑戦を後押しする役割を担ってもらいます。管理職自身が使ってみることが、いちばんのメッセージになります。
推進役には、手を動かしながら学ぶ時間を確保します。実際の業務を題材に試し、うまくいった使い方を言葉にして残してもらいます。
そのほかの社員には、まず「怖くない」「意外と簡単」と感じてもらうことを優先します。苦手意識のある人ほど、身近な同僚が使っている様子を見ることで、ぐっとハードルが下がります。
AIに仕事の手順を覚えさせて、誰でも同じように使えるようにする工夫もあります。考え方はAIを「自分好みの部下」に育てるで紹介しています。新しい社員を迎えるときのオンボーディングと、驚くほど似ています。
役割3 評価:使った人が損をしない(61〜90日目)
最後の1か月で、人事にぜひ手をつけていただきたいのが評価の仕組みです。
よくあるのが、AIで仕事を早く終わらせた人に、空いた時間の分だけ別の仕事が積まれていくという状態です。これでは「工夫するほど忙しくなる」ことになり、誰も本気で取り組まなくなります。
まずは、うまくいった使い方を社内に共有した人を、きちんと認めることから始めてみてください。社内の集まりで発表してもらう、上司が評価面談で取り上げる、といった小さなことで構いません。AIで生まれた時間を何に使うかを、本人と上司で話し合う機会を持つのも効果的です。
個人の工夫が組織の財産になっていく流れは、Agent Skills活用術でも書いています。
90日たったら、人事として見ておきたいこと
90日の区切りで、次のことを振り返ってみてください。
- 推進役は、決めた時間を実際に確保できていたか
- 最初のチームの中で、日常的に使っている人は増えたか
- 苦手意識を持っていた人から、どんな声が出ているか
- 共有した人を認める場面は、実際に生まれたか
数字の成果だけでなく、職場の空気の変化に目を向けることが大切です。「使ってみたら面白かった」という声が出始めていれば、次の90日はずっと進めやすくなります。
おわりに
- 生成AIの導入が止まる原因の多くは、ツールではなく人と組織の側にある
- 情シスが「使える環境」を、人事が「使われる職場」を整えるという分担が鍵になる
- 最初の90日で人事が担うのは、推進役の任命と時間の確保、層ごとの学び方の設計、使った人が損をしない評価の三つ
- 振り返りでは、数字だけでなく職場の空気や社員の声の変化を見る
OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。AIの導入を、人と組織の側からどう支えるか。そうした段階からご相談をお受けしています。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
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この記事の要点
- 生成AIの導入が止まる原因は、推進役が決まっていない、学び方が合っていない、使っても評価されないなど、人事の領域にあることが多い
- 情シスが使える環境を整え、人事が使われる職場を整える。この分担ができている会社ほど導入が進む
- 最初の90日で人事が担う役割は三つ:体制(推進役の任命と時間の確保)、育成(層ごとの学び方)、評価(使った人が損をしない仕組み)
- 90日後は、推進役の時間、利用者の広がり、苦手な人の声、共有した人を認めた場面の有無で振り返る
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。