採用のご相談で企業にうかがうと、最近は話の途中でAIの話題になることが増えました。「求人を出しても応募が来ない。かといって仕事は減らない。AIで何とかなるものなのか」。そして決まって続くのが、「ほかの会社は実際どこまで使っているのか」という質問です。
この記事では、2026年に出そろってきた公的機関や調査会社のデータを、OhEN Funwork Studiosの本業である採用・人事の目線で読み直します。統計の紹介が目的ではありません。人が採れない時代に、この数字が人事に何を突きつけているのかを考えます。
数字で見る、中小企業の「いま」
まず、事実を押さえておきます。
帝国データバンクの調査(2026年3月、有効回答10,312社)では、生成AIを活用していると答えた企業が34.5%でした。ざっと3社に1社です。中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月)では、中小企業でAIを「導入」している割合は20.4%、検討中が18.6%でした。導入した企業の目的は、87.0%が業務効率化や作業時間の短縮です。
調査ごとに数字が違うのは、「ちょっと試した」から「仕事の流れに組み込んだ」まで、使い方の深さに幅があるからです。手を付けた会社は3社に1社ほど、仕組みとして定着させた会社はまだ1〜2割。私たちはそう受け止めています。
規模による差もはっきりしています。帝国データバンクの同じ調査で、活用している割合は大企業が46.5%、中小企業が32.4%、小規模企業が28.0%。従業員1,000人超では63.6%に対し、5人以下は29.6%で、2倍以上の開きがあります。東京商工リサーチの調査では、業種別に最も進んでいるのは情報通信業(64.4%)でした。
「同じ人数で回せる仕事量」の差が開いている
この格差を、人事の言葉に置き換えてみます。AIを使いこなしている会社では、一人あたりがこなせる仕事の量が増えています。帝国データバンクの調査でも、活用企業の86.7%が「効果があった」と答えており、使い道の中心は文章の作成・要約・校正(45.1%)や情報収集(21.8%)といった、どこの職場にもある仕事です。
つまり先行企業は、人を増やさなくても事業を伸ばせる状態に近づいています。反対に、動いていない会社は、仕事が増えたら人を足すしかありません。ところが地方の中小企業にとって、その「人を足す」がいちばん難しい。母集団が集まらない、内定を出しても大手に流れる、採れても辞めてしまう。採用だけで人手不足を埋めるのは、年々厳しくなっています。
採用難とAIの差は、別々の課題に見えて、実は同じ場所に効いてきます。しかもこの差は外から見えません。気づくのは、他社の見積もりが早くなった、提案が良くなった、と感じたときです。
人事にとっての論点は三つ
1. 人員計画を「何人採るか」から組み直す
欠員が出たら同じ職種で補充する。仕事が増えたら増員する。この前提で人員計画を立てている会社は多いと思います。けれども、議事録や報告書づくり、データの集計といった仕事の一部がAIに移るなら、「本当にその人数が必要か」「採るべきは同じ職種か」を問い直す余地が生まれます。採用計画を立てる前に、まず今の業務を棚卸しして、人が担う部分とAIに渡せる部分を分けてみることをおすすめします。
2. 「働き方」が採用競争力になる
求職者の側に立ってみてください。会議のメモを手で起こし、毎週の報告を手作業で打ち込んでいる会社と、そうした作業は仕組みに任せ、人は考える仕事に時間を使っている会社。応募する側がどちらに惹かれるかは、想像がつくと思います。仕事の進め方そのものが、求人票の条件と同じくらい、応募や内定承諾を左右する時代になりつつあります。
3. 社内の「何から始めれば」に人事が答える
調査では、導入していない中小企業の最大の壁は「何から始めればいいか分からない」でした(民間の調査(2026年))。中小企業基盤整備機構の調査でも、求める支援として費用助成と並んで「活用事例などの情報提供」が上位に入っています。
止めているのは技術やお金ではなく、自社のどの仕事に当てればよいかが見えていないことです。ここは、人事が力を発揮しやすい部分です。人事は日ごろから、職務の中身や部署ごとの負荷を把握しています。業務の棚卸しを人事が主導し、時間がかかっている定型業務を洗い出すだけでも、最初の一歩はぐっと具体的になります。
地方企業こそ、先に動く意味がある
私たちは熊本を拠点に、九州を中心とした企業の採用・人事をご支援しています。その立場から見ると、この統計には二つの面があります。
一つは、放っておくと差を「つけられる側」に回るという現実です。大企業や都市部に多い業種が先に進んでいる以上、地方の中小企業が何もしなければ、人手不足と生産性の両方で引き離されます。
もう一つは、まだ間に合うということです。地域を見渡せば、3社に2社は本格的には動いていません。いま一歩踏み出せば、その地域の中では十分に先頭に立てます。そして先に動いた会社は、「この会社は働き方が新しい」という評判を採用でも使えます。
おわりに
AIの利用率は、IT部門だけの指標ではありません。同じ人数で回せる仕事の量、採用で選ばれる力、人員計画の前提。どれも人事が向き合ってきたテーマにつながっています。
OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「採用が厳しいなかで、人員計画や働き方をどう見直せばいいか」といった段階からご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
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この記事の要点
- 2026年の調査では、生成AIを使っている企業は約3社に1社(帝国データバンク34.5%)。中小企業の導入率は20.4%(中小企業基盤整備機構)で、規模による差は2倍以上
- 先行企業は一人あたりの仕事量を増やし、増員に頼らず事業を伸ばせる状態に近づいている。採用難とAIの差は同じ場所に効く
- 人事の論点は、業務の棚卸しから人員計画を組み直すこと、働き方を採用競争力として磨くこと、社内の「何から始めれば」に答えること
- 地方では3社に2社がまだ本格的に動いておらず、いま動けば地域の先頭に立てる
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。