危機の側を書いた記事に続いて、今回は追い風の側の話です。採用と人事を仕事にしている私たちは、AIは地方の中小企業にとって、むしろ大きな味方になり得ると考えています。
気休めのつもりはありません。人が採りにくい会社ほど、AIの恩恵が大きくなる。その仕組みを、人事の目線で順に見ていきます。
採用支援の会社が、あえて言いたいこと
採用支援を生業にしている立場で書くのは少し勇気が要りますが、正直に言います。人手不足を採用だけで解決しようとするのは、もう無理があります。
1人を採るまでの難しさは年々増していますし、採れたとしても一人前に動けるようになるまでには時間がかかります。採用が要らなくなるわけではありません。ただ、採用一本足で事業計画を組むのは危うい、ということです。
そこでもう一つの柱になるのが、一人あたりの生産性です。働き手を増やしにくい地方ほど、一人の力を底上げする施策の価値は、人が集まりやすい都市部より大きくなります。しかも、AIが得意な仕事は、人手不足の職場にたまりがちな仕事とよく重なります。会議の記録、報告書の作成、数字の集計や転記、問い合わせへの最初の返答。私たちの実感では、こうした業務にかかる時間は10分の1ほどになります。
いまの5人が7人分、10人分の仕事を回せる道は、もう見えています。私たちが勧めたいのは、採用で入口を確保しながら、AIで必要な人数そのものを下げるという両輪の考え方です。
両輪で考えると、人事の打ち手が変わる
人員計画:「何人足すか」の前に「何を任せるか」
欠員や業務増を、まず増員で埋めようとする前に、その仕事のうちAIに任せられる部分を見積もってみてください。そのうえで残った仕事に必要な人数とスキルを考えると、採用の数も、求める人物像も変わってきます。
採用の範囲:通勤圏の外まで候補者が広がる
AIを使った成果物、たとえば分析レポートや提案資料、Webサイト、業務の仕組みは、どこで作られたかを問われません。私たち自身、熊本を拠点にしながら、オンラインで北海道の自治体から首都圏の企業までお手伝いしています。
これは採用にもそのまま当てはまります。場所を選ばない仕事が増えれば、これまで「通えないから」という理由だけで見送っていた都市部の候補者とも、話ができるようになります。リモートで成り立つ職務を切り出しておくことは、採用の母集団を広げる準備でもあります。
小さな組織の速さを、人事が生かす
AIは大企業向けだと思われがちですが、実際に導入の場面に立ち会うと、逆のことがよくあります。大きな会社では、稟議や部署間の調整、既存の仕組みとのすり合わせで、全社に広げるまでに1年かかることも珍しくありません。数十人の会社なら、経営者が決めれば翌週には始められます。
この速さを生かすうえで、人事にできることがあります。最初に試す部署とメンバーを決め、うまくいったやり方を社内で共有する場をつくることです。小さな会社は、顔の見える範囲で成功例が伝わるので、広がるのも速い。技術が切り替わる時期に伸びてきたのは、いつも身軽に動けた側でした。
「工夫する力」を評価と育成に組み込む
地方の会社の多くは、予算も専門の部署も、余った人手もない中でやりくりしてきました。これまでは弱みとされてきた点ですが、私たちはここに強みがあると見ています。限られた手段で何とかしてきた職場には、「どの仕事に当てれば一番効くか」を考える力が育っているからです。高い仕組みを入れても使いこなせない会社がある一方で、身の丈の道具で成果を出す会社がある。そうした場面を、私たちは何度も見てきました。
この力を一部の人の頑張りで終わらせないために、人事の仕組みに組み込んでおくことをおすすめします。業務のやり方を変えて時間を生み出した人を評価する。気づいたことを提案しやすい場をつくる。若手に、改善の担い手として任せてみる。工夫が報われる職場には、工夫する人が残ります。
走り出す前に、土台を整える
一つだけ順番を守ってください。最初に、安心して使える環境、私たちの言うセキュリティガードレールを整えることです。
これを飛ばして走り出すと、小さなつまずき一つで「やはりAIは危ない」という空気が社内に広がり、せっかくの勢いが止まってしまいます。ルールと環境を整え、間違えてもすぐに気づける小さな業務から試し、うまくいった型を広げる。急がば回れで、これがいちばんの近道です。
おわりに
AIは、使わなければ地方と都市部の差を広げ、使いこなせば地方の不利を打ち消します。同じ道具が、向き合い方ひとつで逆の結果を生みます。
私たちOhEN Funwork Studiosが、採用・人事の会社としてAIの話をするのは、人手不足と生産性が同じ問題の裏表だと考えているからです。「採用と業務の見直しを、セットで考えたい」といった段階からご相談をお受けしています。地方の時代は、待っていても来ません。一緒につくる側に回りましょう。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
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この記事の要点
- 採用だけで人手不足を埋めるのはもう難しい。採用で入口を確保しつつ、AIで必要な人数そのものを下げる両輪で考える
- 人員計画は「何人足すか」の前に「何をAIに任せるか」から。場所を選ばない仕事が増えれば、採用の母集団も通勤圏の外へ広がる
- 少人数の会社は決めてから動くまでが速い。試す部署を決め、成功例を共有する場づくりは人事が担える
- 制約の中で育った「工夫する力」を評価と育成に組み込む。順番は、安全な土台→小さな業務→社内に展開
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。