OhEN Funwork Studios
Blog

AIで職務が入れ替わるとき、人事は何をすべきか|肩書きはそのまま「失業」した代表の実体験から

#Claude Code#事例

人事や組織づくりのご相談を受けていると、最近こんな声をよく聞きます。「AIを入れたいが、入れたあと社員の仕事がどうなるのかが見えない」。ツールの話は世の中にあふれていても、仕事の中身と組織がどう変わるかの話は、まだ少ないと感じています。

この記事では、まず私(OhEN Funwork Studios 代表)自身に起きたことを正直にお話しします。そのうえで、同じことが社員一人ひとりに起きたとき、人事が何を見直すべきかを考えます。

肩書きは同じなのに、仕事が別物になった

結論から言うと、私は一度「失業」しています。会社を辞めたわけではありません。役職も名刺も変わっていません。変わったのは、毎日やっている仕事の中身です。

長いあいだ、私の業務の半分ほどは、大量のエクセルデータに関数やプログラムを組み、そこから課題を掘り当て、戦略やコスト削減の提案をまとめ、パワーポイントの資料に落とし込むことでした。稼ぐ力の源泉は、関数を組む腕とスライドを作る腕だったと言ってもいいと思います。

ところが2025年の後半からは、自分の手で関数を書いたりスライドを直したりした回数は、数えるほどになりました。何年もかけて身につけた武器を、ほとんど抜かなくなったのです。

人事の目線で言い直すと、これは「本人が望んだわけでもないのに、職務の中身が丸ごと差し替わった」状態です。異動も昇格もしていないのに、ジョブディスクリプション(職務記述書)だけが勝手に書き換わっている。私は、これから多くの職場で同じことが起きると考えています。

何が速くなり、何が残ったのか

きっかけは、Claude Code(クロードコード)というAIエージェントを日々の業務に組み込んだことでした。2026年に入ってから、グループのメンバーの生産性は体感で10倍ほどになっています。あくまで体感値で、厳密に測ったものではありません。

目立って変わったのは、次のような業務です。

  • 打ち合わせ後の議事録: 20分かかっていたものが30秒
  • 提案資料: 2時間が20分
  • エクセルや社内システムでの管理・報告: 週2時間が週5分
  • 定例会議の議題づくりと参加者への案内: 週1時間が、人の手を介さずゼロに
  • データを集めて分析し、レポートにする作業: 10時間が2時間

一方で、ほとんど変わらなかったものもあります。お客様と会って話す時間です。データ分析や資料づくりは20倍近く速くなったのに、対面の商談はほぼそのまま。この「縮む仕事」と「縮まない仕事」の差こそ、組織を考えるうえで大事なポイントです。

上の一覧を見ると、どれも特殊な仕事ではありません。どの会社のどの部署にもある定型業務ばかりです。つまり職務の入れ替わりは、一部の専門職ではなく、ごく普通の事務やマネジメントの仕事から始まります。

「相談相手」ではなく「部下」が来るということ

ブラウザで使うチャット型のAIは、質問に答えてくれる相手です。答えを聞いたあと、作業をするのは人間です。これに対してPCの中で動くAIエージェントは、ファイルを開き、手を動かし、成果物まで仕上げてくれます。相談相手と、仕事を引き取ってくれる部下くらいの違いがあります。

部下が増えれば、上司の仕事は「自分でやる」から「任せ方を決める」へ移ります。私の今の仕事もまさにそれで、議事録、決まった型の報告、データ分析、資料づくり、システムへの転記といった業務を、AIが全部あるいは半分引き受けられるように仕組みを組むことが本業になりました。職種で言えば、別の職種への転職に近い変化です。

グループ会社の株式会社Method Hubでは、開発、不具合の発見と修正、Webサイトの閲覧状況の確認と共有、改善案の検討、週次の活動を踏まえた定例会議の議題づくりまで、社内の仕組みの多くがAIで回っています。人がやっているのは、仕組みの設計と判断です。

人事が見直したい4つのこと

ここからが本題です。社員一人ひとりに私と同じ変化が起きたとき、人事は何から手をつければよいのか。私たちは、少なくとも次の4つの見直しが必要だと考えています。

1. 役割定義を「作業」から「任せ方と判断」へ

職務記述書に作業の手順を細かく書いている会社ほど、その記述は早く古くなります。作業の多くはAIに移るからです。書き直すときは、「何をつくるか」「どこまでAIに任せ、どこで人が確認するか」「最後に誰が判断するか」を軸にするのがおすすめです。

2. 評価軸を「かけた時間」から「仕組みと成果」へ

議事録が30秒で終わる世界では、遅くまで残って資料を仕上げたことを評価する理由はなくなります。見るべきなのは、成果の質と、業務をAIに任せられる形に組み替えたかどうか。自分の仕事を仕組み化した人が、評価のうえで損をしない設計にしておくことが大切です。

3. 育成のはしごを組み直す

これまで若手は、議事録や資料づくり、データ集計といった定型業務を通じて仕事を覚えてきました。その下の段がAIに置き換わると、若手が経験を積む場所がなくなります。AIの成果物をチェックする役割を若手に任せる、判断の場面に早めに同席させるなど、はしごの段を意識的に作り直す必要があります。

4. 採用要件を書き換える

求人票の必須スキルに「エクセル関数」「パワポ作成」と書いているなら、一度見直す時期かもしれません。私自身がまさにそのスキルで長く仕事をしてきて、それを使わなくなった当事者です。これから問われるのは、業務を分解し、AIに任せる部分と人が担う部分を切り分けられる力だと考えています。

進める順番を間違えないために

人事の制度を変える前に、まず整えるべき土台があります。それは安全です。社外秘の情報を入れてよいのか、社員にどこまで自由に使わせるのか。この線が引かれていないと、現場は怖くて手を出せません。私たちは、この利用ルールと安全な環境を「セキュリティガードレール」と呼んでいます。

土台ができたら、議事録や転記のように「間違えてもすぐ気づける業務」から試し、うまくいった型を社内に広げていきます。そして職務が実際に変わりはじめた段階で、役割定義・評価・育成・採用の見直しに入る。この順番であれば、専任のIT部門を持たない中小企業でも、無理なく進められます。

おわりに

AIは、配っただけでは組織を変えません。空いた時間を何に振り向けるのか、変わった職務をどう評価し、人をどう育て、どんな人を迎えるのか。ここは技術ではなく、人事と組織づくりの領域です。

OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「AIで社員の仕事が変わりそうだが、役割や評価をどう見直せばいいか分からない」といった段階からご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。

AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。

あわせて読みたい


この記事の要点

  • AIエージェントの導入で、代表自身の中心業務(エクセル関数・資料作成)がほぼ消え、肩書きはそのまま職務だけが入れ替わった
  • 速くなったのは議事録や報告、資料づくりなど、どの会社にもある定型業務。対面の商談のように縮まない仕事も残る
  • 人事が見直すべきは、役割定義・評価軸・育成のはしご・採用要件の4つ
  • 進める順番は、安全な環境づくり→小さな業務で試す→職務の変化に合わせて人事制度を見直す

OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。

006Contact

「夢中になれる組織」の現在地を、
話しませんか。

採用・人事・アスリート支援、いずれの相談もお気軽に。 まずは30分のオンラインヒアリングからお受けしています。