前回の記事では、MCPを「AIと社内ツールの共通の差し込み口」として紹介し、つなぐことは権限を渡すことだとお伝えしました。今回はその実践編です。
題材に選んだのは、採用担当の方なら誰もが頭を抱えている面接の日程調整です。Gmail・カレンダー・ドライブをまとめたGoogle Workspaceを、AIエージェントのClaude Codeにつないで、どこまで任せられるのかを見ていきます。実際に使ってみると、「秘書がついた」と言っても大げさではないと感じるはずです。
日程調整は、採用でいちばん目立たない時間泥棒
面接の日程を決めるまでには、意外と多くの手順があります。面接官それぞれの予定を確認し、全員がそろう時間を探し、候補者に提示する案を選び、案内のメールを書く。返事が来たら、また予定を押さえ直す。一つひとつは小さな作業ですが、選考が何件も並行して動いていると、担当者の一日はこの調整で細切れになります。
しかもこの時間は、会社の外からは見えません。評価にも残りにくい。けれど、ここが滞ると選考全体が止まります。
AIへの頼み方は、この一文
MCPでカレンダーとメールがつながっていれば、たとえば次のように頼めます。
面接官3名のカレンダーを見て、
・来週で3名全員が空いている90分枠をすべて洗い出す
・候補者に提示する日程を、午前と午後のバランスを見て3つ選ぶ
・候補者向けの日程提案メールの下書きも作る
をまとめてください。3人分の予定を自分で開いて見比べる必要はありません。AIが直接カレンダーを読み、候補を絞り、メールの下書きまで用意してくれます。
ほかにも、日々の採用業務では次のような頼み方ができます。
- 「この候補者とのやり取りを、古い順にまとめて」と頼めば、受信箱をさかのぼる手間がなくなる
- 「この職種の選考に関係する資料をドライブから集めて一覧に」と頼めば、フォルダを探し回らずに済む
どれも一回なら数分で終わる作業です。ただ、それが毎日十数回あると、集中力はそのたびに途切れます。この細かな中断が減ることの効果は、数字以上に大きいと感じています。
つなぐ前に、許可画面で一度立ち止まる
つなぎ方そのものは、それほど難しくありません。設定にGoogle Workspace用の接続を加え、ブラウザでGoogleアカウントにログインし、「今日の予定を教えて」と話しかけて動くか確かめる、という流れです。手順は変わることがあるので、Claude Code自身に「Google WorkspaceをMCPでつなぎたいので、手順を案内して」と頼むのがいちばん確実です。
大事なのは、ログインの途中で出てくる「このAIにアクセスを許可しますか」という画面です。ここで許可するのは、あなたの代わりにメールや予定を扱う権限をAIに預けることです。読むだけを許すのか、書き込みや送信まで許すのか。中身を確認してから決めてください。前回お話しした権限設計を、実際に体験する場面です。
選考のスピードは、候補者体験そのもの
ここからが、人事の目線で強調したいところです。日程調整の速さは、作業効率の話にとどまりません。
日程の候補を返すのに2日かかる会社と、その日のうちに返せる会社。候補者が複数の会社を同時に受けているなら、この差はそのまま選考の歩留まりの差になります。優秀な人ほど早く決まっていく採用市場では、返事の速さは「この会社は自分を大切に扱ってくれるか」という候補者の印象にも直結します。
採用担当者の役割も変わります。調整に追われていた時間を、候補者との面談の準備や、面接官との評価のすり合わせ、内定後のフォローといった、人にしかできない仕事に回せるようになります。役割定義を見直すなら、「調整をこなす人」から「候補者との関係をつくる人」へと軸を移すのがよいと考えています。
チームで使うなら、運用ルールを先に決める
一人で試す段階から、採用チーム全体で使う段階に移るときは、ルールづくりが欠かせません。私たちが必ず守っているのは次の一点です。
メールの送信や予定の確定など、社外に届く操作は、AIには下書きまでしか任せない。送信ボタンは人が押す。
候補者への連絡ではとくに重要です。お見送りのお知らせ、条件の提示、内定の通知。一通の書きぶりで会社の印象が決まってしまう場面で、人の確認を省く理由はありません。「読む・探す・まとめる」はAIに任せ、「外に出す」瞬間だけ人が見る。この線引きが、便利さと安心を両立させる現実的なところだと考えています。
もう一つ付け加えると、この線引きは口頭で伝えるだけでは守られません。繁忙期には必ず崩れます。採用チームの業務マニュアルに書き込む、新しく加わった担当者のオンボーディングで最初に伝える、そして可能であれば社内の利用ルールとして仕組みの側で固定しておく。ルールは人ではなく仕組みに覚えさせるのが、長続きのこつです。
おわりに
面接の日程調整は、採用のなかで最も地味で、最も時間を奪う仕事の一つです。ここをAIに任せられると、選考は速くなり、担当者は候補者と向き合う時間を取り戻せます。そのために人事が決めるべきは、どこまで任せ、どこで人が確認するかという線引きです。
OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「選考のスピードを上げたい」「採用チームのAI活用のルールを整えたい」といったご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
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この記事の要点
- AIをカレンダーとメールにつなぐと、面接官の空きの突き合わせから候補者への提案メールの下書きまでを一言で頼める
- 接続時の許可画面は、自分の代わりにメールや予定を扱う権限をAIに預ける場面。範囲を確かめてから許可する
- 日程を返す速さは、選考の歩留まりと候補者の印象を左右する。採用担当者の役割は「調整」から「関係づくり」へ移せる
- 社外に届く連絡は下書きまで。線引きはマニュアルやオンボーディング、仕組みの側に固定して、繁忙期でも崩れないようにする
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。