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AI Readyなデータ基盤とは|人事データが分断されたままでは、AIは働けない

#AI活用#事例

前回の記事では、AIが働ける組織の条件として「必要なデータを取り出せること」と「仕事の前提が言葉になっていること」を挙げました。今回は、その土台となるデータの置き場所の話です。

DWHやベクトルストアといった言葉は、システム会社との打ち合わせで出てきても、なんとなく頷いて終わりがちです。この記事では、それを人事データに置き換えて、経営者や人事責任者が判断に使える形でかみ砕いてみます。

人事の問いに、なぜ誰も答えられないのか

たとえば、こんな問いを考えてみてください。

「入社経路別に、3年後の定着率と評価の推移を見たい」

採用に関わる方なら、一度は知りたいと思ったことがあるはずです。ところが、この程度の問いに答えるだけで、採用管理、勤怠、給与、評価という4つのシステムからデータを書き出し、エクセルで突き合わせる作業が必要になる。そういう会社は決して珍しくありません。

手間がかかるので、結局だれも見ない。見ないので、どの経路から採ると定着しやすいのか、どんな人が活躍しているのかが分からないまま、次の採用計画を立てることになります。採用の判断がいつまでも勘に頼ったままになる理由の一つは、ここにあります。

システム同士がつながっていない理由はAPIの記事でも触れましたが、データの置き場所そのものを見直さないかぎり、AIを入れても同じ壁にぶつかります。

器は2つ: 数字の倉庫と、文脈の倉庫

AIに渡したい人事の情報は、大きく2つの性質に分かれます。

数字の倉庫(DWH)

DWH(データウェアハウス)は、あちこちのシステムに散らばった数字を1か所に集め、整えておく倉庫です。

人事でいえば、応募から入社までの記録、勤怠、給与、評価の結果、異動や退職の履歴。これらを社員一人ひとりに紐づけてまとめておけば、先ほどの「入社経路別の定着率」も、手作業の突き合わせなしにAIへ「この倉庫を見て集計して」と頼むだけで済むようになります。

数字の倉庫が答えるのは、「離職率は何%か」「どの部署で残業が多いか」といった、何が起きているかです。

文脈の倉庫(ベクトルストア)

もう一つがベクトルストアです。こちらは、文章を意味で探せる形で貯めておく倉庫です。ふつうの検索はファイル名や言葉が一致しないと見つかりませんが、ベクトルストアなら「こういう理由で辞めた人の記録を探して」のような聞き方で、内容の近い文書を引き当てられます。

人事にとって、ここに入れたいのは次のような記録です。

  • 面接での評価コメント
  • 1on1の面談メモ
  • 退職者へのインタビューの記録

これらは数字にならないため、これまでは個々のファイルに埋もれていました。文脈の倉庫が答えるのは、「なぜ辞めたのか」「どんな人が活躍しているのか」といった、なぜそうなっているかです。数字だけを眺めていても、決して見えてこない部分です。

2つの倉庫がそろうと、AIは「自社の人と組織を知っている相談相手」になります。

人事データだからこそ、先に決めること

人事データの倉庫づくりには、ほかのデータにはない難しさがあります。それは、倉庫ができた瞬間に、そこが社内で最も機微な情報の集まる場所になることです。給与も、評価も、面談の内容も入るからです。

そのため、集める前に次の点を決めておくことをおすすめします。

  • 誰が、どの範囲を見られるのか(経営層・人事・部門長・本人で分ける)
  • AIにどこまで読ませるのか、読み取りだけに限るのか
  • 面談メモのように本人の言葉が含まれる記録を、どう扱うのか

アクセス範囲は、集めてから絞るより、設計してから集めるほうがはるかに簡単です。この順番を逆にすると、後から権限を整理するのは非常に厄介になります。権限の考え方は、AIを社内ツールにつなぐときと同じで、役割に応じて範囲を決め、記録を残し、段階的に広げるのが基本です。

中小企業の人事は、どこから始めるか

「データの倉庫なんて大企業の話では」と感じた方もいるかもしれません。大がかりな基盤づくりには確かに投資が要りますが、始め方は段階的で構いません。人事データの場合、次の順番が現実的です。

  1. 地図をつくる: どの人事データが、どのシステムやファイルに、どんな形であるのかを書き出す。この作業自体もAIに手伝わせられます
  2. 一番知りたい問いから小さく: すべてを集めようとせず、「定着」や「採用経路」など、意思決定に効く問いに必要なデータから集める
  3. 文章はまず共有の場所へ: 面談記録や退職者インタビューは、いきなり専用の倉庫をつくらなくても、チームで共有できる場所に集めるところからで十分

あわせて、「入社経路」や「定着」のような言葉の定義をそろえておくことも欠かせません。部署によって数え方が違えば、倉庫に集めても数字は比べられないからです。

大切なのは、データの整備を「いつかやる大きなプロジェクト」にしないことです。一つの問いに答えられるようになるだけでも、採用や定着についての議論は目に見えて変わります。

おわりに

AIが人事の相談相手として働けるかどうかは、AIの性能よりも、人事データがどこにどんな形で置かれているかで決まります。数字の倉庫で「何が起きているか」を、文脈の倉庫で「なぜそうなっているか」をつかむ。そのうえで、誰が何を見られるかを先に決める。これが、人事データを組織の力に変える土台です。

OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「採用経路と定着の関係を見えるようにしたい」「退職者の声を次の採用や制度に活かしたい」といったご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。

AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。

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この記事の要点

  • 採用・勤怠・給与・評価が別々のシステムにあると、「入社経路別の定着率」程度の問いにも答えられず、採用の判断が勘のままになる
  • 器は2つ。数字の倉庫(DWH)は「何が起きているか」、文脈の倉庫(ベクトルストア)は面接コメントや1on1メモ、退職者インタビューから「なぜそうなっているか」に答える
  • 人事データの倉庫は社内で最も機微な場所になる。誰が何を見られるか、AIにどこまで読ませるかを、集める前に設計する
  • 始め方は段階的でよい。データの地図づくり、知りたい問いからの小さな集約、文章の共有場所への集約、言葉の定義の統一から

OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。

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