経営会議の資料を見せていただくと、人事のページだけが数字の一覧で終わっていることがよくあります。採用の進捗、応募者数、離職率、残業時間、有給の取得状況。数字はきちんと並んでいるのに、「だから何をするのか」が書かれていない。
これは担当者の力量の問題ではない、と私たちは考えています。集めて、まとめて、体裁を整えるところでエネルギーを使い切ってしまう。読み解く余力が残らないのです。
「生成AIでできること」シリーズの第4回は、報告資料づくりを取り上げます。人事の視点で、報告の作り方とあわせて、人事部門の役割そのものがどう変わるかを考えます。
報告業務を分解すると、ほとんどが「作業」
定例の報告資料ができあがるまでの流れを分けてみると、だいたい次の3段階になります。
- あちこちのシステムやファイルから数字を集めて集計する
- 前の週や前の月と比べて、増えた・減ったを確かめる
- 決まった様式に数字を入れ、見た目を整える
並べてみると、いずれも判断というより作業です。報告という仕事の価値は、本来「数字を見て次の手を考える」ところにあります。ところが現場では、作業のほうに時間を取られ、考える時間がほとんど残っていません。金曜の午後や月初の数日が、毎回この作業で埋まってしまう会社は少なくないはずです。
人事の月次レポートをAIに任せる
データの置き場所と様式さえ決まっていれば、こうした報告づくりはAIエージェントにかなりの部分を任せられます。人事の月次レポートなら、たとえば次のような頼み方になります。
- 採用管理システムの出力と勤怠データから、今月分を集計する
- 応募・面接・内定・入社の各段階の数と、前の月からの増減をまとめる
- 部署ごとの残業時間と有給取得率を、前年の同じ月と比べる
- いつもの月次の様式に入れて保存し、気になる動きがあれば「所見」として書き添える
私たちのグループでは、こうした報告書やダッシュボードはほぼ自動で仕上がる状態になっています。定例会議の議題づくりも、メンバー全員の一週間の動きをAIが読み取って用意しており、以前は週1時間かかっていた手間がなくなりました。
注目していただきたいのは、最後の「所見」です。AIは数字の小さな異変を感情を交えずに拾い上げます。ある部署だけ残業が伸びている、特定の求人媒体からの応募が急に減った、入社3ヶ月以内の退職が一部の職種に偏っている。見れば分かるはずなのに、集計で手いっぱいで誰も気づいていなかった変化を、最初に知らせてくれる存在になります。
人事が先に決めておきたい3つのこと
報告づくりを任せる前に、人事として決めておきたいことがあります。
1. 何を見るかという「指標の設計」
AIは決められた数字を正確に集めてくれますが、何を見るべきかまでは決めてくれません。採用なら各段階の通過率、定着なら入社後の早い時期の退職、働き方なら残業と有給。自社にとって経営判断に効く指標はどれかを先に選び、様式を固めておくことが自動化の近道です。毎回形が変わる報告は、人にとってもAIにとっても扱いにくいものです。
2. 数字の正しさを確かめる仕組み
人事の数字は、社員の処遇や配置の判断に使われます。間違いは許されません。集計結果を別の方法でもう一度計算させるなど、検算を組み込んだ頼み方にしておくと安心です。また、AIの所見はあくまで仮説です。最終的な判断の前には、元のデータを人の目で確認する手順を残してください。
3. 個人が特定されない集計の単位
少人数の部署で部署別の残業時間を出すと、それがそのまま特定の誰かの勤怠を示してしまうことがあります。集計の単位や、誰がどの粒度まで見られるかは、最初にルールとして決めておく必要があります。社員の情報をAIでどう扱うかの線引きは、生成AIを安全に使うにはもあわせてご覧ください。
人事が「提案する側」に回るために
報告づくりを自動化していちばん大きいのは、時間が浮くこと以上に、報告の意味が変わることです。提出して終わる書類から、意思決定のための材料へと戻ります。
人事部門にとって、これは経営会議での立ち位置が変わるということでもあります。数字を集めて出す係から、数字を読み、打ち手を提案する側へ。たとえば「この部署の残業増は人員配置の問題なので、次の採用計画に反映したい」と言えるのは、集計に追われていない人事だけです。
そのためには、空いた時間で何をするかを、人事部門の役割として明確にしておくことが大切です。分析や現場へのヒアリング、制度の見直しの提案など、期待する仕事を役割定義や目標に書き込んでおかないと、浮いた時間は別の雑務で埋まってしまいます。
おわりに
報告資料をAIに任せる取り組みは、業務効率化であると同時に、人事部門の仕事の重心を移す取り組みです。作る時間を減らし、考える時間を取り戻すことで、人事は経営の議論に加われるようになります。
OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「人事の報告が数字の羅列で終わっている」「経営に役立つ人事の指標を設計したい」といった段階からご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
あわせて読みたい
- 生成AIでできること③転記作業編|「これをやるために入社したのか」をなくす
- 生成AIでできること①データ分析編|専門部署ゼロで、採用データを読み解く
- 生成AIでできること⑤提案資料編|人は筋を、AIは形を
この記事の要点
- 人事の報告が数字の羅列で終わるのは力量ではなく作業量の問題。集計・比較・体裁整えはAIに任せられる
- 採用・離職・残業・有給の月次レポートをAIに任せると、「所見」が見落とされていた変化の最初の知らせになる
- 任せる前に、見る指標の設計・検算の仕組み・個人が特定されない集計単位の3つを決めておく
- 浮いた時間を人事部門の役割として定義し直すことで、人事は数字を出す係から打ち手を提案する側へ移れる
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。