「採用管理システムからデータは出せるが、眺めて終わっている」「分析はエクセルが得意なあの人に頼りきり」——多くの会社で耳にする光景です。人事のデータほど、貯まっているのに使われていないものはないかもしれません。
今回から5回に分けて、生成AI(特にClaude CodeのようなAIエージェント)で実際にできることを、業務別に紹介していきます。第1回はデータ分析です。
ビフォー: 分析は「エクセル職人」の属人技だった
これまで、社内のデータ分析には2つの壁がありました。一つはスキルの壁。ピボットテーブルや関数を使いこなせる人にしか、データから答えを引き出せません。もう一つは時間の壁。関数を組み、グラフを整え、資料にまとめると、簡単な分析でも半日仕事になります。
結果として、データはあるのに意思決定は勘と経験のまま——という状態が続いてきました。採用でいえば、「今年はなんとなく応募が少ない気がする」で会議が進んでしまう、あの状態です。
AIに任せると、こうなる
AIエージェントを使うと、データ分析は「日本語で質問する」仕事に変わります。データのファイルを指定して、知りたいことをそのまま聞くだけです。
採用データなら、実際の指示文はたとえばこんな具合です。
このフォルダの応募者データ(2024〜2026年)を読み込んで、
・媒体別の応募数と、書類通過→面接→内定の歩留まり
・前年から歩留まりが悪化している媒体と、その要因の仮説
・1名採用あたりのコストが低い順のランキング
を、来期の採用計画会議で使える1枚のレポートにまとめてください。
グラフも付けてください。AIはデータを読み込み、集計プログラムを自分で書いて実行し、グラフを作り、レポートに仕上げるところまで一気にやります。所要時間は数分。しかも「この歩留まりの悪化は、特定の職種だけの話では?」と追加で聞けば、その場で掘り下げてくれます。分析が、専門家への依頼から対話に変わるのです。
同じことが、売上、勤怠、離職、従業員サーベイのデータでもできます。「残業時間と離職率に関係があるか」「評価と定着に相関はあるか」——これまで「調べたいが手が回らない」で流していた問いに、その日のうちに答えが出せます。
私たちが支援してきた実感では、10時間かかっていた分析・レポート作成が2時間程度になります。例えば、エクセルの生データだけで400メガバイトあるような巨大な明細データ(これは通常スペックのPCであれば開くことさえできないレベルです笑)なども分析することが可能です。一般相関分析から重回帰分析などの統計解析、また相関のみならず複数切り口での因果分析まで、従来であればデータに強いコンサルティングファームに数百万円から1千万円などで依頼していた深掘り分析も、自分たちでできてしまいます。浮いた時間はそのまま、「で、どうするか」を考える時間に使えます。
つまずきポイントと対処法
実際にやってみると、つまずくのはだいたい次の4つです。
- いきなり分析を指示すると、思ったアウトプットにならないことがあります(何が出てくるか運次第という意味で、私たちは「ガチャ化」と呼んでいます)。まずはデータや資料をAIに見せて、「このデータセットならどんな分析ができそうか?」という分析設計から始めるのがコツです。納得のいく設計ができたら、いよいよ分析を実行します
- 数字を鵜呑みにしてしまう: AIも集計を間違えることがあります。合計値など要所の数字は元データと突き合わせる「検算」の習慣を。私たちは重要なレポートでは、AIに自分で検算させる指示も入れています
- 用語の定義がずれる: 「応募数」は重複を含むのか、「内定率」の母数は応募か書類通過か。「売上」は税込か税別か。定義を最初に伝えないと、もっともらしく間違えます。初回に定義メモを渡しておくのがコツです
- 個人情報の扱い: 応募者名簿や従業員データなど個人情報を含むものは、ガードレールを整えた環境で扱うこと。人事データの分析は、氏名を伏せたデータでもほとんど成立します
とくに4つ目は人事領域では避けて通れません。逆に言えば、匿名化の手順さえ決めてしまえば、いちばんデータが貯まっている部署がいちばん恩恵を受けられます。
まずは手元の1ファイルから
最初から基幹システムと連携する必要はありません。毎月見ているエクセルを1つ渡して、日頃疑問に思っていることを聞いてみる。それだけで「うちのデータはこんなことまで分かるのか」という発見があるはずです。
次回は、市場調査・競合調査などのリサーチ編です。
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この記事の要点
- AIエージェントでデータ分析は「日本語で質問する」仕事に変わる。集計・グラフ・レポート化まで数分で完了し、追加の掘り下げも対話で可能
- スキルの壁(エクセル職人への依存)と時間の壁(半日仕事)が同時に消える
- 採用の歩留まり、残業と離職の関係、評価と定着の相関など、「調べたいが手が回らない」で流していた問いにその日のうちに答えが出る
- つまずきは4つ: いきなり実行せず分析設計から入る / 検算の習慣を持つ / 用語の定義を先に渡す / 個人情報はガードレール内で扱う
- 最初の一歩は、毎月見ているエクセル1つをAIに渡して質問してみること
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