「うちの給与は、地域の同業と比べて見劣りしていないだろうか」「採用で競り合っている会社は、いまどんな条件で募集しているのか」。人事の方なら、こうした疑問を何度も抱いたことがあると思います。けれども、その答えを探すために丸2日を確保できる人事担当者は、まずいません。
生成AIで何ができるのかを業務ごとに紹介するシリーズの2回目は、リサーチです。人事の調べ物を、AIエージェントにどう任せればよいかを考えます。
人事の調査が、いつも後回しになる理由
人事の毎日は、目の前の対応で埋まっています。面接の日程を調整し、候補者と話し、入社の手続きを進め、労務の問い合わせに答える。そのなかで「腰を据えて相場を調べる」時間は、どうしても取れません。
しかも、調べ物そのものに手間がかかります。検索し、ページを開き、読み、書き留める。これを繰り返し、競合3社の求人票や採用サイトを見比べて表に整理し、考えをまとめるだけで、2〜3日はかかります。
その結果、給与テーブルの見直しや募集条件の改定が、「なんとなくの印象」や「前回と同じ」で決まっていく。人事の判断の土台が薄いまま、という会社は少なくありません。
調査を「たたき台づくり」から任せる
AIエージェント(PCの中でファイルを開き、Webで調べ、資料までまとめるAI)は、調べる観点の整理から、情報集め、出典付きのレポートづくりまでを通しで引き受けてくれます。採用の競合を調べるなら、たとえばこんな頼み方ができます。
熊本で〇〇業を営む当社が、採用で競り合っているA社・B社・C社について調べてください。
知りたいのは、いま募集している職種、示している給与の幅と働き方の条件、
求人票や採用サイトで強く打ち出している点、ここ1年の新制度や待遇の変化です。
比較表を付けたレポートにし、それぞれの情報には出典のURLを添えてください。
確かめられなかったことは「不明」と書いてください。これまで数日かかっていた調査が、数時間でたたき台の形になります。前提として覚えておきたいのは、AIの調査は完璧ではないということです。出来上がったものは完成品ではなく、人が判断するための材料、質の良い下書きと考えてください。それでも、ゼロから一人で調べるのに比べれば、かかる時間は大きく違います。
人事の仕事には、同じやり方が使える場面がたくさんあります。
- 地域や職種ごとの給与水準を確かめる
- 他社の育休制度や、同一労働同一賃金への対応の仕方を比べる
- 使えそうな助成金や、関係する法改正の動きを洗い出す
「ほかの会社はどうしているのか」を知りたい場面すべてで、最初の下調べをAIに任せられます。
頼み方で、調査の質は大きく変わる
リサーチをAIに任せるとき、必ず押さえておきたいのは次の三つです。
- 出典を必ず付けさせる: AIは、ありもしない情報をそれらしく書いてしまうことがあります(ハルシネーションと呼ばれます)。指示に「出典のURLを添える」「分からないことは不明と書く」を入れ、大事な数字はリンク先を開いて元の情報を確かめてください
- いつ時点の情報かを書かせる: 古い求人や改正前の制度をもとに判断しないよう、情報の時点を明記させます。制度や法令の調査では、とくに欠かせません
- 何のための調査かを伝える: 「給与テーブルの改定のため」「募集条件を見直すため」と目的を書き添えると、レポートの焦点がはっきりします
根拠を示せる人事であるために
AIのリサーチを社内に根づかせるうえで、私たちが大切にしているのは、使い始めの段階で「型」をつくることです。「AIがそう言っていたから」ではなく、「出典を確かめたうえで、こう判断した」と言える使い方を、最初から決まりにしておきます。私たちも、社内のレポートには出典を書くことを必須にしています。
人事の判断は、給与や働き方の制度など、社員の暮らしに直接かかわります。根拠を示せない提案は通らないし、通すべきでもありません。出典を添える作法は、AIのためというより、人事の仕事の基本として持っておきたいものです。
もう一つおすすめしたいのが、調査の定例化です。採用計画を立てる前や、評価・給与の見直しの前など、毎年決まった時期に同じ観点で競合や相場を確かめる。指示文をひな形として残しておけば、担当者が変わっても同じ質で続けられます。調べる時間が数時間で済むなら、これまで年に一度もできなかった定点観測が、無理なく回り始めます。
浮いた時間は、調べた結果をもとに「うちは何を打ち出すのか」「どこで差をつけるのか」を考えることに使ってください。そこは、AIではなく人事が担う部分です。
おわりに
給与相場や競合の募集条件を、印象ではなく根拠で語れるようになる。それだけで、採用の打ち手も、社内への説明の説得力も変わります。
OhEN Funwork Studiosは、採用支援と人事・組織づくりを仕事にしている会社です。「募集条件や給与の見直しを、根拠をもって進めたい」といった段階からご相談をお受けしています。お気軽にお声がけください。
AIの活用を社内でどう進めるかは、AI活用支援でもご紹介しています。ご相談はお問い合わせフォームから、お気軽にどうぞ。
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この記事の要点
- 給与相場や競合の募集条件の調査は、人事で最も後回しになりやすく、判断が印象や前例に頼りがちになる
- AIエージェントに任せると、数日がかりの調査が数時間で「判断のための下書き」になる。他社制度や助成金・法改正の下調べにも使える
- 頼み方のコツは、出典を付けさせる・情報の時点を書かせる・調査の目的を伝えるの3つ
- 「出典を確かめて判断する」型と、時期を決めた定点調査のひな形をつくっておくことが、根拠を示せる人事への近道
OhEN Funwork Studiosでは、採用・人事の現場に根ざしたAI活用支援・AI研修を提供しています。